フリーランスや副業で業務委託を受けると、発注者・仲介会社・元請から、業務委託契約書・基本契約・個別契約・秘密保持契約書が届きます。けれども、受け取った契約書は出す側の利益を守る目的で作られていることが多く、業務の範囲を広げる言葉、支払を止められる条項、既存のコードやテンプレートまで取られる知的財産の条項、上限のない賠償、発注者だけが使える解約権が並んでいることがあります。このガイドでは、アトラス行政書士法人が受注者の立場でレビューしてきた業務委託契約書・秘密保持契約書・誓約書と、先方へ送った修正のお願いの文案、受注者のために作成した契約書の実例をもとに、条文の一次確認を踏まえて、受け取った契約書を読む順番、締結前の確認、条項ごとの直し方、フリーランス法との関係、先方への伝え方までを、テーマごとに詳しく整理しています。

契約書を受け取ったばかりの方

タブレットの横で書類にペンで書き込む手元(白黒写真)

条項を1つずつではなく、組合せで読む

最初に、請負か準委任かという類型、基本契約と個別契約のどちらが優先するか、返事をしないと契約が成立する条項がないかを確かめます。

そのうえで、解除・相殺・賠償・管轄が順番に作動する連鎖がないかをたどります。署名の前には、相手方の実在と、修正版の照合も欠かせません。

報酬と支払が心配な方

方眼紙の上に置かれた電卓と鉛筆、消しゴム

支払を止められる仕組みを、先に外す

支払の延期の条項、履行しない場合の不支給、発注者の承認、相殺の条項など、発注者の判断だけで支払が止まる仕組みを見つけ、理由を客観的なものに限ります。

特定業務委託事業者(従業員を使用する発注者など)との取引でフリーランス法がかかる場合は、受領日から60日以内の支払期日が必要です。月末締め翌月末払いが60日を超える場合にも注意します。

著作権と実績公開を守りたい方

絵の具や筆、描きかけの絵が並ぶ制作机を上から見た様子

渡すものと残すものを分ける

既存のコード・テンプレート・ノウハウまで取られる書き方になっていないかを確かめ、受注者に残すものと、成果物に使った分の利用の許諾を定めます。

権利が移る時期を支払と結び付け、実績として紹介できる範囲も契約書に書いておきます。

賠償と保証の条項が重い方

筆記体の手紙の上に置かれた万年筆

上限と、落ち度のない責任の切り離し

上限のない賠償には、取引に合った物差しで上限を置き、故意・重大な過失だけを上限の外にします。

第三者の権利を侵害しないことの保証は、過失・範囲・期間・金額に分けて限定し、発注者の提供素材の責任は発注者に置きます。

解約とNDAが気になる方

カレンダーアプリの予定表を映したノートパソコンの画面

終わり方と、守り続けられる秘密保持

発注者だけの解約権、発注者の判断による解除、作業済みの分も請求できない条項を直し、途中で終わったときと直前のキャンセルの精算を決めます。

秘密保持契約書は、複製・保存・存続期間・返還と消去が、実際の業務で守れる形になっているかを点検します。

修正のお願いを出したい方

ノートパソコンのキーボードを打つ人の手元

相手の担当者がそのまま社内に回せる形で

先方に送るのは、現行の条文・修正後の条文・理由をそろえた資料と返信の文案だけにし、譲歩の線は手元にとどめます。

受注者が自分で契約書を用意するときは、短くしすぎると任意規定に戻ることに注意し、数字と条件で調整します。

このガイドの解説ページ

よくあるご質問

発注者から届いた業務委託契約書は、どこから読めばよいですか?

まず、請負か準委任かという類型、基本契約と個別契約のどちらが優先するか、返事をしないと成立する条項がないかを確かめます。そのうえで、解除・相殺・賠償が順番に作動する組合せがないかをたどり、個々の条項を読みます。

修正をお願いすると、仕事をもらえなくなりませんか?

取引への前向きな姿勢を示し、「確認させてください」から入り、どちらか一方に有利にするためではないと伝えれば、多くの場合は受け止めてもらえます。修正は数件に絞り、現行の条文・修正後の条文・理由をそろえて示すと、先方も検討しやすくなります。

フリーランス法があれば、契約書の内容は気にしなくてよいですか?

法律の義務の多くは、発注者が従業員や複数の役員を抱えているか、取引がどのくらい続くかでかかり方が変わります。法律がかからない部分もあるため、支払期日・解除の予告・配慮などは契約書に書いておくことが大切です。

賠償の上限がない契約でも、署名してよいですか?

個人の受注者にとって、上限のない賠償は重い負担です。契約金額や直近の報酬、保険の支払限度額などを物差しに上限を置き、故意・重大な過失だけを上限の外にする修正をお願いするのが基本です。

著作権を全部渡す契約は、受けないほうがよいですか?

成果物の著作権を渡すこと自体は一般的です。既存の素材やノウハウが受注者に残るか、権利が移る時期が支払と結び付いているか、実績として紹介できるかを確かめ、必要な修正をお願いします。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日