このページの要点
- 業務の一覧はチェック式にして、メニューの言葉が何を引き受けることになるかを項目ごとに読み分ける。節税の提案は、一般的な情報の提供にとどめる。
- 税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法2条1項)は受けない旨を、秘密保持契約書でなく業務委託契約書や利用規約の業務範囲の条に置く。
- 資料の提出方法と期限、遅れたときの責任、法令上の期限の直前の依頼、繰り越した仕訳をどの月に数えるかを、報酬の条とあわせて書く。
- データの安全管理は別紙の基準で決め、終了後の保管・返還・削除も書く。外注の入力担当者には、再委託の承諾、生成AIへの入力禁止、私物端末の禁止を置く。
最初に押さえること:受ける仕事・始められる条件・数え方の3つを先に決める
記帳代行(領収書・請求書・通帳の明細などの資料をもとに、クラウド会計ソフトへ取引を入力し、帳簿を整える仕事)や経理サポート(月次の確認、入金状況の把握、経費の整理といった周辺の事務)を、個人事業者として請ける方が最初に迷うのは、条文の難しさよりも次の3点です。
- どこまでが自分の仕事か:入力だけなのか、経費の分類の提案や月次の報告まで含むのか。税務に関する相談を受けない、と契約で言い切れているか。
- 何が届けば仕事を始められるか:資料の提出方法と期限、遅れたとき・期限の直前に頼まれたときの責任の分け方。
- 件数が増えたとき、報酬はどうなるか:月の上限件数、超過分の単価、遅れて届いた資料を何月分として数えるか。
アトラス行政書士法人は、記帳代行・経理サポートを請ける個人事業者の業務委託契約書、クラウド型の記帳代行を事業として行う方の利用規約や外注向けの契約書、経理・一般事務を日額で請ける方の契約書などを確認してきました。ここでは、その中で繰り返し決める必要があった点を、受注者(仕事を請ける側)の立場で整理します。
なお、このページは契約書の書き方を扱うもので、税の計算や申告の方法には立ち入りません。税務に関する業務は受けない、という線引きを契約でどう書くか、というところまでです。報酬と支払の一般的な直し方は報酬・支払条件、業務範囲の一般論は業務範囲・修正回数、資料が届かないときの一般論は発注者から資料が届かないときで扱っています。
業務の範囲:チェック式の一覧と、範囲を広げてしまう言葉
個人で記帳代行を請ける方の業務委託契約書には、業務の範囲を「該当する業務に■を付す」チェック式の一覧にしたものがありました。一覧には、会計ソフトへの記帳入力、入力内容の網羅性・整合性のチェック、経費の計上漏れの指摘、経費科目の分類の提案、入金状況の把握、月次のレポート、四半期ごとのオンラインコーチングなどが並び、契約ごとに該当するものを選ぶ作りです。会計ソフトの指定、資料の提出方法も同じチェック式の欄になっていて、契約の都度、顧客に合わせて埋められるようになっています。
この方式は、顧客ごとに内容が違う継続的な仕事に向いています。一方で、チェック式にするときは次の3点を決めておく必要があります。
- ■を付けなかった業務は受けないのか:付けなかった業務を頼まれたとき、追加の見積りを出す扱いにするのか。範囲の変更・追加は、双方が協議して書面または電子メールで決める、と書いておきます。
- 一覧の言葉が、どこまでを含むのか:「適正な分類」「最適化」「助言」のような、判断を伴う言葉は、契約の後で「当然含まれる」と主張される余地があります。
- 稼働の水準:チャットへの対応時間を、たとえば平日の日中、受信から48時間以内、土日祝日に届いたものは翌営業日、のように書きます。常時の対応を約束する仕事ではないことを、数字で示す書き方です。
これに対して、発注者側から受注者が受け取る契約書は、範囲を広げる言葉で書かれがちです。企業の経理事務・一般事務・人事業務を日額で請ける方の契約書は、業務を「経理事務(記帳、帳票作成、経費精算処理、会計ソフト入力)、一般事務、人事業務、前各号に附随または関連する一切の業務」と書き、しかも「甲の指示に基づき」「随時必要とされる範囲において」遂行するという作りでした。日額の報酬のもとで、附随する一切の業務まで含まれると読まれると、仕事が日ごとに膨らみます。この種の言葉の直し方は業務範囲の直し方にまとめています。
経理サポートのメニューは、項目ごとに「その言葉が何を引き受けることになるか」を読み分けると整理できます。
メニューの項目を契約書に書くときの読み分け
| 項目 | 契約書での書き分け | 近づきやすい危うさ |
|---|---|---|
| 会計ソフトへの記帳入力 | 「提出された資料に記載された取引を、委託者の指定する方法で入力する」と、入力の根拠を資料に置く。 | 資料にない取引まで推測して入力する責任を負わされる。 |
| 網羅性・整合性のチェック、計上漏れの指摘 | 「提出された資料の範囲で」「気づいた事項の指摘にとどまり、網羅を保証しない」と限定する。 | 資料が足りないのに、漏れがあれば受注者の責任と読まれる。 |
| 経費科目の分類・最適化の提案 | 分類は委託者の方針・指示に従う。提案は一般的な情報の提供で、最終の判断は委託者が行う。 | 「最適化」が、個別の課税関係の判断にまで及ぶと読まれる。 |
| 入金状況の把握、未収金のリスト作成 | 資料に基づく状況の把握と共有まで。債権の回収そのものの代行や、相手方との交渉は含まない。 | 回収の代行や交渉まで頼まれ、法律事務に近づく。 |
| 回収のための文案の提供・編集 | 文案は参考として提供し、送付・交渉は委託者が行う。 | 文案どおりに送って回収できなかったときの責任を問われる。 |
| 節税対策の提案 | 載せるなら、一般的な情報の提供にとどめる。個別の課税関係の判断・相談は含まないと同じ条に書く。 | 税務相談(税理士法2条1項3号)に近づく。 |
| 月次レポート、四半期のコーチング | 作成する資料の種類・頻度・提出期限を決める。経営判断の代行は含まないと書く。 | 成果(業績の改善)の保証と読まれる。 |
メニューの言葉をそのまま契約書に載せるのではなく、右の列のような読まれ方をしないかを確かめてから載せます。
税務に関する業務を受けない、と書く:置く場所と書き方
記帳代行の契約書で最も大事な線引きは、記帳の仕事と、税務の仕事を分けることです。税理士法は、税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士の業務とし(2条1項)、税理士または税理士法人でない者がこれを行うことを制限しています(52条)。記帳代行を請ける方は、これらを請け負わない、と契約書で明らかにしておく必要があります。このページでは、その線引きを契約書にどう書くかだけを扱い、税務の中身には立ち入りません。
クラウド型の記帳代行を事業として行う方の利用規約では、これが次の形で書かれていました。
- サービスの内容の条で、会計資料をもとにした会計ソフトへの入力・帳簿作成の支援を行うもので、税務代理・税務書類の作成・税務相談を目的としない、と書く。
- 別の条で、税務上の判断・処理方法の選択・税法の解釈その他の専門的判断が必要な事項は、利用者が自分の責任で判断することを確認させる。
- さらに別の条で、税務官公署に対する申告・申請・届出・説明、税務調査への立会い・代理対応は行わず、官公署からの問い合わせや指摘への対応は利用者の責任と費用で行う、と書く。
- 申告その他の手続に関する最終の確認と責任は利用者にあり、受注者は申告内容の適法性や有利不利を保証しない、と書く。
この種の条は、受注者を守る力が強い反面、相手方(顧客)の側から見ると「一方的」に映ります。顧客が事業者であっても、書き方を「確認してもらう」形にし、顧客の側の判断で行うことが何かを具体的に示すと、受け入れられやすくなります。
受け取った条文の直し方 税務を受けない旨を置く場所
確認条項の置き場所
理由秘密保持契約書は情報を守るための契約です。業務範囲や法令上の位置づけの確認を混ぜると、契約の目的がぼやけ、その条の効力や解釈をめぐる争いのもとになります。
条文例しない業務と責任の分担(利用規約・業務委託契約の例)
1乙が行う本業務は、委託者から提供された資料に基づく会計ソフトへの入力、帳簿作成の支援及びこれに付随する事務であり、税理士法第2条第1項に定める税務代理、税務書類の作成又は税務相談を含まない。
2乙は、委託者に代わって、税務官公署その他の官公署に対する申告、申請、届出、説明又は調査への立会いを行わない。これらに関する官公署からの照会又は指摘への対応は、委託者が自己の責任と費用で行う。
3申告その他の手続に関する最終の確認及び責任は委託者に帰属し、乙は、申告内容の適法性、正確性又は有利不利を保証しない。
4乙は、前各項に該当する事項について委託者から相談を受けたときは、これに応じず、委託者が自己の責任で必要な判断を行うことを求めることができる。
第4項は、断る権利を条文にしておくための一文です。顧客から断りにくい相談を持ち込まれたときに、「契約で受けないと決めている」と答える根拠になります。
資料の受渡し:提出の方法・期限・遅れたときの扱いを先に決める
記帳代行は、資料が届かなければ始まりません。個人の受注者の契約書では、資料の受渡しについて次のような定めが置かれていました。
- 提出の方法を、メールへの添付、クラウドストレージ、郵送などの選択肢から契約の都度選ぶ。電子的な受渡しにはパスワードの付与、アクセス制限などの合理的な安全措置を講じる。
- 資料の遅延、破損、紛失、送信不能などの障害が起きたときは、双方が誠意をもって協議して復旧に協力する。ただし、一方の責めに帰すべき障害なら、その当事者が責任を負う。
- 郵送などの物理的な手段で資料を送るときの送料と付随費用は、送る側が負担する。特定の送付方法(速達、書留など)を相手に指示した場合の費用も、送る側が負担する。ただし、指示された側がその方法に応じられない合理的な理由があるときは、協議して別の方法を決める。再提出・返送・誤送付による再送は、責任のある当事者が負担する。
- 国外からの発送、国外への送付が生じるときは、事前に書面で費用負担を決める。
クラウド型の記帳代行の利用規約では、受注者の側に有利な定めも置かれていました。資料の提出の方法と期限は受注者が指定する。資料の遅延や不足によって生じた損害について受注者は責任を負わない。法令上の期限の直前に依頼されたときは、対応する義務を負わず、対応できなかったことの責任も負わない。資料の提出が遅れたときは、サービスを停止できる。
ただし、事業者どうしの契約であっても、「事前の通知なく停止できる」「一切の責任を負わない」といった言い切りは、そのまま通るとは限りません。実際の運用では、資料が届かないときに催促を行い、一定の日数が過ぎたら停止する、という順番を契約書に書いておくほうが、揉めたときに受注者が説明しやすくなります。資料の遅れが長引いたときの全体像は資料が届かないときで扱っています。
確かめる問い 資料の受渡しの条を確かめる
- 資料は、誰が・どの方法で・いつまでに出すのか。提出の方法と期限が決まっていないと、遅れの責任をどちらにも言い切れません。
- 期限に遅れたとき、処理の期限は同じ日数だけ延びると書いたか。委託者の遅れで処理が遅れても、受注者が期限の遅れの責任を負わされるのを防ぎます。
- 法令上の期限が近い時期に頼まれたときは、受ける義務がないと書いたか。繁忙期の駆け込みの依頼を断る根拠になります。優先対応の料金を別に用意する方法もあります。
- 提出された資料の内容に誤りや不足があったとき、誰の責任と書いたか。受注者は、提出された資料が真実で正確であることを前提に入力します。その前提を契約書に書いておきます。
- 資料をいつまで保管し、いつ返すのか。紙の原本の扱いを決めておかないと、終了後に預かり続けることになります。
料金の設計:プラン・業種の係数・月の上限件数・超過単価
記帳代行の報酬は、月額の基本料金に、仕訳(取引の入力)の件数に応じた追加の料金を組み合わせる設計がよく使われます。個人の受注者の契約書は、次のように組み立てられていました。
- 月額の基本料金は、提供するプラン(内容と水準の異なる複数のコース)に、顧客の業種などに応じた係数を掛けて決める。
- 月の上限件数を決め、これを超えた件数には、1件あたりの追加報酬を請求できる。
- 基本料金・追加報酬のほかに、契約の開始時には初期サポートの費用と過去の月分のサポートの費用を、決算の月には決算の手数料を別に請求する。
- 日割り計算は行わず、報酬は月末の時点で顧客が加入しているプランで確定する。
- 報酬が税込か税別かを明記する。
この設計のうち、後から揉めやすいのは「数え方」です。次の2点を契約書に書いておきます。
条文例仕訳の件数の数え方(例)
1仕訳の件数は、当該月に帳簿へ登録された伝票を基準として算定し、1枚の振替伝票は1件として数える。
2事業主勘定を用いた仕訳も、帳簿に登録されているものは件数に含める。
3委託者による資料の提出の遅れ又は内容の不備により、処理が当該月内に完了せず翌月以降に繰り越された場合、その仕訳は、原則として処理を行った月の件数として数える。ただし、特別な事情があり、かつ双方があらかじめ同意した場合は、当該仕訳を本来の対象月に係るものとして数えることができる。
第3項は、資料の遅れで月をまたいだ仕訳が、どの月の上限件数に入るのかを決める条です。
第3項に当たる条は、次のように整理されました。
繰り越した仕訳をどの月に数えるか(版ごとの書き方)
| 案 | 書き方 | ねらいと残る問題 |
|---|---|---|
| 当初の案 | 超過件数の追加報酬の定めのみで、資料の遅れで繰り越した仕訳の扱いが書かれていない。 | 資料の遅れで月末に間に合わなかった分を、どの月の件数とするかが決まっていない。 |
| 改訂後 | 原則は処理を行った月の件数として数える。特別な事情があり、双方が事前に同意したときだけ、本来の対象月に数える。 | 実際に作業した月に件数が立つ形に整理し、例外は事前の同意に限る。 |
決算の月の手数料と、契約開始時の初期サポート・過去月分の費用も、改訂後の報酬の条に書き加えています。
料金表は、契約書の本文に細かく書かず、プラン表として別紙にし、契約書には「別紙のプランによる」と書くやり方もあります。この場合も、数え方の条(上のような件数の算定方法)は本文に残します。報酬体系を改定するときは、更新日より前に合理的な期間をもって通知し、異議がなければ次の更新時から適用する、という手続も、あわせて書いておきます(料金の改定の手続)。
支払い・停止・解約:継続の仕事は、終わり方まで書く
月額で続く記帳代行では、支払いの遅れと解約が、実務で最も揉めやすい場面です。個人の受注者の契約書は、次のような設計でした。
- 締日は毎月末日、請求書は翌月の初旬に発行し、同月の中旬までに銀行振込で支払う。振込手数料は委託者の負担とする(弁済の費用は債務者が負担するのが原則です。民法485条)。
- 支払が遅れたときは、年14.6%の割合による遅延損害金を支払う。金銭債務の遅延損害金は、約定の利率が法定利率を超えるときはその約定の利率で計算されます(民法419条1項ただし書)。
- 報酬の支払が請求書の支払期日から7日を過ぎたら、催告をせずに、事前に通知したうえで業務を一時的に中止できる。中止の範囲は受注者が合理的に判断し、委託者の業務に著しい影響がありうるときはその旨を説明する。未払報酬の全額の支払を確認してから、速やかに業務を再開する。
- 未払いが30日以上続くときは、業務の提供を停止し、または契約を解除できる。
7日と30日、と段階が分かれている場合は、「一時中止」と「停止・解除」のどちらをいつ使うのかを、条文どうしで読み合わせて整合させておく必要があります。止める条と、解除する条の期間がずれていると、実際にどの時点で何ができるのかが分からなくなります。
解約については、個人の受注者の契約書では、委託者は14日前までの通知で解除でき、受注者は通知で即時に解除できる(その代わり契約の残りの期間の報酬を請求する権利を放棄する)、解除の月の報酬は日割りにせず全額が発生する、という定めでした。委任や準委任は、各当事者がいつでも解除できます(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がない限り損害の賠償が必要です(同条2項1号)。この初期設定を、予告の期間と精算の方法で具体的にしておくのが解約の条の役割です。一方、クラウド型の記帳代行の利用規約では、最低契約期間を1年とし、その間は自己都合による中途解約をできないとし、期間の満了後は1か月ごとの自動更新、解約を希望するときは希望月の14日前までに所定のフォームで申し出る、としていました。受注者の側で最低契約期間を置くなら、その間の解約を認める事由(受注者の債務不履行など)と、解約のときの精算(解約・解除と精算)をセットで書いておきます。
データと安全管理、そして外注の入力担当者
記帳代行は、顧客の取引・口座・取引先・従業員の情報を預かる仕事です。受注者が顧客から預かるデータの扱いは、契約書の本文では細目を書かず、別紙の「安全管理基準」を参照する形にすると運用しやすくなります。別紙には、次のような項目を置くと運用しやすくなります。
別紙の安全管理基準に書く項目
- 通信の暗号化(クラウド会計ソフト・ストレージへの接続)
- 多要素認証の利用と、アカウントの共有をしないこと
- アクセス権限の範囲(閲覧のみ、入力まで、設定の変更はしない、など)
- 保存データの暗号化と、操作ログの取得・保存
- データが保存される場所(データセンターの所在国)と、サービスの提供者の変更を知らせる手続
- 私物端末・公衆無線LANの利用の可否と、利用するときの条件
個人情報を含むデータを預かる側は、個人情報保護法23条(安全管理措置)の対象になり、委託を受ける側は、委託元から25条(委託先の監督)に基づく管理を求められます。データが海外のサーバーに置かれる場合は、28条(外国にある第三者への提供の制限)との関係も整理しておきます。
契約が終わったあとのデータの扱いも、書いておく必要があります。クラウド型の記帳代行の利用規約は、契約期間中と終了後7年間はデータを保管できる、その期間が過ぎたら通知なく削除できる、終了後のデータの保管・復元について受注者は義務を負わない、と定めていました。受注者の側から見れば、保管の期間を区切り、復元の義務を負わないと明記しておく意味はありますが、顧客から預かった個人情報を含むデータなので、保管の目的(問い合わせや紛争への対応)、削除の方法、削除を終えたことの報告、返還の方法と期限も、あわせて決めておくと、あとで説明がつきやすくなります。帳簿・証憑書類・電子データの保存義務は委託者にある、と書いておくのも、受注者の責任の範囲を示すうえで役に立ちます。受注者が負う責任の総額には、直近12か月に受領した報酬の総額を上限とする、といった定めが置かれていました(賠償の上限の考え方)。
仕事が増えて、入力を外注の担当者に任せるようになると、受注者は「元の顧客から請ける側」と「外注に出す側」の両方になります。元の顧客に対しては、再委託をするときに事前の承諾を求められることが多く、承諾なしに第三者に資料を見せられない契約になっていることもあります。再委託の承諾を求めるときは、再委託先の名称・担当者・委託する業務の内容を知らせる必要があります。外注先に対しては、顧客に対する義務と同じ水準の義務を負わせる契約を結び、その行為について自分が責任を負う、という形になります。
この外注先に出す契約では、会計データを生成AIなどの外部サービスへ入力することと、本業務のデータを私用の端末・私用のクラウドサービス・個人のメールアドレスに保存することが、禁止されていました。
逆に、受注者が外注の入力担当者として、記帳代行の事業者から契約書を受け取ることもあります。次の点を確かめてから署名します。
外注の入力担当者として契約書を受け取ったときの点検
- 個別契約が基本契約に優先する定めのとき、メールやチャットで合意した個別の条件によって、基本契約の保護が上書きされないか(読む順番)
- 不備があるときの報酬の留保、修正費用の控除、損害賠償との相殺が、受注者の判断では争えない形で書かれていないか(報酬と支払条件)
- 報酬が、完了した業務・承認された業務にだけ発生すると書かれ、承認の基準がなく、未了の業務の報酬が請求できないことになっていないか
- 検収の後に不備が見つかったときの責任が、期間の定めなく続く形になっていないか(検収・契約不適合)
- 元の顧客や顧客の見込みの相手への営業・契約を、契約の終了後の数年間も禁止し、違約金を定めていないか。違約金を「損害賠償額の予定ではない」と書き添えても、民法420条3項は違約金を賠償額の予定と推定します。そのうえ別に実際の損害の賠償も請求できる、となっていると、二重の請求になるのではないかを確かめる(競業・直接取引の禁止)
- 受注者の責任に上限がなく、発注側の責任にだけ上限があるという偏りがないか
- 成果物やノウハウの権利が、期間の定めなく発注側に移り、受注者が持つ入力の手順まで使えなくなる形になっていないか(知的財産)
- 受注者が辞めるときの予告と引継ぎが、やむを得ない事由に限られていないか、損害賠償の定めが重すぎないか
受注者に起きがちなこと
よくあるご質問
記帳代行を請けるとき、契約書に税理士法のことを書く必要がありますか?
税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士の業務として定められています(税理士法2条1項、52条)。記帳代行を請ける契約書では、これらを受けない旨を業務範囲の条に明記します。確認の条は、秘密保持契約書ではなく、業務委託契約書や利用規約に置きます。
「節税対策の提案」をメニューに載せても大丈夫ですか?
載せるなら、一般的な情報の提供にとどまり、個別の課税関係の判断・税務相談・税務代理を含まないと、同じ項に書く必要があります。「法令の範囲内で」と書いても、提案の中身が個別の判断に及ぶかどうかは変わらないためです。載せないほうが簡明な顧客には、メニューから外します。
資料が遅れて月をまたいだ分は、どの月の仕訳として数えますか?
契約書で決めておくことです。実際に作業した月の件数として数えるのを原則とし、特別な事情があり、双方が事前に同意したときだけ、本来の対象月に数える、という書き方があります。何も書いていないと、上限の件数や追加報酬をめぐって見解が分かれます。
外注の入力担当者に任せるとき、契約書で何を決めますか?
再委託の承諾の手続(元の顧客から承諾を得ること)、顧客に対する義務と同じ水準の義務を負わせること、外部サービス(生成AIなど)への入力の禁止、私物端末への保存の禁止、終了時のデータの返還と削除を決めます。外注先の行為について受注者が責任を負う形になるため、外注先との契約にも、同じ水準の定めが必要です。
契約が終わったあと、データはいつまで保管しますか?
保管の期間と目的、期間が過ぎたときの削除の扱い、返還の方法と期限、削除を終えたことの報告を決めます。受注者が復元の義務を負わないことも明記しておきます。帳簿・証憑書類・電子データの保存義務は委託者にある、と書いておくと、受注者の責任の範囲が示せます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への法律の適用は、当事者の属性や取引の内容によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が受注者(業務を請ける側)の立場で作成・レビューしてきた業務委託契約書、基本契約・個別契約、秘密保持契約書、誓約書、先方へ送る修正のお願いの文案などを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 法人番号公表サイト(国税庁)