オンライン秘書・事務代行・EC運営アシスタントの業務委託契約書:行わない業務・アカウント・時間の数え方

頼まれごとが際限なく広がりやすい仕事だからこそ、契約書の側で、行わない業務、預かるアカウントの責任、時間の数え方を先に決めておきます。

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「軽微な事務作業」と書いたために、その中身をめぐって追加報酬の話がまとまらない。委託者の側から契約書を確認すると、指摘されるのは書かれていない部分です。

このページの要点

  • 法律・税務・労務の判断、契約締結の代理、口座や決済の操作、資格や許認可が要る業務を「行わない業務」として並べる。単価で受ける仕事は、単価表が範囲になる。
  • 依頼者のIDとパスワードは依頼者の責任で共有してもらい、故意・重大な過失がなければ第三者の不正利用の責任を負わない。端末、再委託、終了後の削除も書く。
  • 作業時間に含まれるもの、15分単位の切上げ、待機は数えないこと、24時間対応の義務がないことを書く。月額は前払いと入金確認後の着手を特約にする。
  • 仲介サイトを通すときは、サイトの規約が優先する事項を限定して列挙し、取引の中身は基本契約と個別契約で決める。

最初に押さえること:行わない業務・預かるアカウント・時間の数え方・仲介サイトの規約との順位

オンライン秘書、事務代行、EC運営のアシスタント(商品登録、カスタマー対応、海外向けの代行など)は、頼まれる仕事の幅が広い分、頼まれごとが際限なく広がりやすい仕事です。メールの下書きや送信の補助、スケジュール調整、リサーチ、議事録や資料の作成、予約や出張の手配、問い合わせの一次対応と、依頼者から見れば「何でも頼める人」になりやすく、受注者から見れば、報酬の範囲を超えた仕事が積み重なります。

アトラス行政書士法人は、オンライン秘書・バイリンガルのアシスタント・事務代行を請ける個人事業者の基本契約、経理・一般事務を日額で請ける方の契約書、月額の固定報酬でアシスタントとWebデザインを請ける方の契約書、EC運営の商品登録・顧客対応・海外代行を請ける個人の契約書を確認してきました。反対側の視点として、教室がオンライン秘書業務を委託するときの契約書の確認も行っています。これらを通して、受注者が先に決めておくべき点は、次の4つに集約されました。

  1. 行わない業務:法律・税務・労務などの判断、契約締結の代理、口座や決済の操作、資格や許認可が要る業務を、契約書の側で先に外しておく。
  2. 預かるアカウントと情報:依頼者のIDやパスワードを預かるときの責任の分け方、私物の端末の扱い、終わったときの削除。
  3. 時間の数え方:作業時間に含まれるもの、端数の処理、待機の時間、24時間対応の義務がないこと。
  4. 仲介サイトの規約との順位:クラウドソーシングなどの仲介サイトを通して受けるとき、サイトの規約と自分の契約書のどちらが優先するか。

顧問・コンサルの契約書で「しない業務」を並べる一般論は別のガイドでも扱われていますが、ここでは、秘書・事務代行に固有の線引きと数え方に絞ります。時間や場所の固定が雇用と見られないかという独立性の論点は競業・再委託・指示と独立性、報酬と支払の一般的な直し方は報酬・支払条件、業務範囲の一般論は業務範囲・修正回数で扱っています。

「行わない業務」を先に並べる

オンライン秘書を請ける個人事業者の基本契約では、委託業務の条に、受ける業務と受けない業務が並べて書かれていました。受ける業務は、メール対応の支援と送信の補助、タスク・進捗・スケジュールの管理、リサーチと情報整理、議事録・資料・マニュアルなどの作成、翻訳と英文のチェック、顧客対応の補助、予約と出張の手配、その他双方が合意した業務、というものです。そのうえで、次の業務は行わない、と明記されています。

  • 法律、税務、会計、労務、医療又は投資に関する判断、助言又は代理行為
  • 契約締結の代理又は代理決裁
  • 銀行口座の操作又は金銭決済の操作
  • その他、法令上、資格又は許認可を必要とする業務

それぞれに理由があります。判断や助言は、資格者の業務か、結果の責任を負えない領域です。契約締結の代理や代理決裁は、依頼者の名前で契約が成立し、その責任が受注者に及ぶ危険があります。口座や決済の操作は、事故が起きたときに受注者が疑われやすい行為です。資格や許認可が要る業務は、報酬を得て業として行うこと自体が制限されている場合があります。たとえば、行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とし(行政書士法1条の3第1項)、行政書士又は行政書士法人でない者は、他に法律の別段の定めがある場合などを除いて、これを業として行うことができません(同法19条1項)。申請書類の作成を頼まれたときは、ここでいう「作成」を受けられるのか、資料の整理や入力の補助にとどまるのかを、契約書の側で区別しておく必要があります。

文面の例 範囲外のことを頼まれたときの返信(例)

いつもありがとうございます。お送りいただいた件は、ご契約の「行わない業務」にあたるため、私の側では判断や代行をお受けできません。

代わりに、必要な資料の整理と、確認していただきたい点の一覧づくりまでは、本日中にお手伝いできます。いかがでしょうか。

断るときは、契約書の条を示したうえで、できる範囲の代案を添えます。理由を契約に置いておくと、人柄の問題にならずに済みます。

EC運営のアシスタントの契約では、業務が「商品の登録1件」「カスタマー対応1件」「海外向けの代行1件」のように、単価で並べられていました。この形では、単価表が業務の範囲そのものになります。単価表に載っていない業務を頼まれたときは、別途の見積りと合意で受ける、と書いておくのが基本です。一方、「その他、上記に付随する軽微な事務作業」のような言葉を自分で書くと、「軽微」の中身が決まっていないために、範囲の外縁が曖昧になります。

実際に、教室がオンライン秘書業務を委託する契約書を、委託者の側から確認した報告書では、受注者が用意したと見られる雛形について、次の点が指摘されていました。受注者が自分の契約書を作るときは、相手方の専門家が確認するとこう読まれる、という視点で、先に手当てしておくのが有効です。

委託者の側から確認すると、指摘されやすい点

条項委託者の側から指摘されやすい点受注者が先に書いておくこと
業務の範囲「軽微な事務作業」が定義されていない。受注者が「軽微でない」と主張して追加報酬を求める余地がある。「軽微」を作業時間(たとえば1件あたり15分以内)などで定義するか、単価表に載せて範囲を確定する。
応答の水準対応する曜日・時間が受注者の裁量で、返信の速さが契約上の義務になっていない。対応する曜日・時間帯、受信から返信するまでの目安(たとえば48時間以内)、休日の扱いを書く。
稼働時間定義、計測の単位、端数処理、記録の方法がなく、超過の精算が自己申告に頼る形になっている。何を作業時間に数えるか、記録の方法(作業の記録表の共有など)を書く。
個人情報・再委託・終了時のデータ個人情報の取扱い、再委託の制限、終了時のデータの返還・削除の条項が欠けている。個人情報の取扱いの条、再委託の条件、終了後のデータの返還・削除の条を置く。
指示がないとき指示がなければ受注者は動かず、指示がないことを業務の中断の事由にできる。指示を待つ時間の扱い(作業時間に数えない、納期は延びる)を書き、中断の事由は支払の遅れなどに限る。

委託者の側の指摘は、契約書の完成度に関するものが中心です。受注者が先に手当てしておけば、修正の依頼を受ける前に話を進められます。

預かるアカウント・ID・パスワードと、私物の端末

秘書や事務代行では、依頼者のメール、クラウドストレージ、予約や発注のためのアカウントを預かります。オンライン秘書の基本契約は、次のように書いていました。

  • 依頼者のアカウントやIDとパスワードの共有が必要なときは、依頼者が自己の責任で共有する。受注者は、善良な管理者の注意をもってこれを管理する。ただし、受注者の故意又は重大な過失がない限り、不正アクセス、漏えいその他第三者による利用について責任を負わない。
  • 業務上必要な場合を除いて、情報の複製、保存、持出し、画面のスクリーンショットの保存、外部への送信、外部記録媒体への保存を行わない。私物の端末を使うときは、適切な安全管理措置を講じる。
  • 契約の終了後は、依頼者の指示に従ってデータの返還・削除などを行い、求められたときは、削除などを完了したことを報告する。
  • 秘密情報や個人情報の漏えい、滅失、毀損などの事故が発生し、またはそのおそれがあることを認識したときは、速やかに依頼者へ報告して、被害の拡大を防ぐ措置をとる。

預かる側の責任が、故意または重大な過失に限られている点が、受注者にとって大事です。依頼者が共有の方法を決め、依頼者の側でパスワードを管理しているのであれば、第三者による不正な利用の責任まで受注者が負うのは筋が通りません。委託者の側から確認した報告書では、委託者が個人情報取扱事業者として委託先を監督する義務を負う(個人情報保護法25条)ことから、個人情報の安全管理、目的外の利用の禁止、再委託の制限の条項が契約に欠けていること自体が、委託者側のリスクとして指摘されていました。つまり、これらの条項は、受注者を縛るためだけでなく、依頼者が受注者に仕事を任せるうえで必要なものとして、受注者の側から先に出すことができます。

事故が起きたときの責任の分け方

場面受注者の責任依頼者の責任
依頼者が共有したIDとパスワードから、第三者に不正に使われた故意・重大な過失がなければ負わない。共有の方法とパスワードの管理は依頼者の責任。
受注者の私物の端末がウイルスに感染した安全管理措置を講じていたかが問われる。依頼者は、必要な措置の内容を事前に示す。
依頼者が契約している外部のサービスが停止した障害・仕様変更・通信障害に起因する遅れ・データの消失は負わない。サービスの選定と契約は依頼者の責任。
受注者が再委託した先から情報が漏れた再委託先の選定・監督の責任を負い、自らの行為と同等の責任を負う。重要な情報を扱う再委託には、事前の承諾を与えるかを判断する。

再委託は、通知だけで足りる場合と、重要な情報に触れるため事前の承諾が必要な場合に分けて書く方法があります。

預かる情報の守り方そのものは、秘密保持契約書の側で決めます(秘密保持・NDA)。本契約と別に秘密保持契約を結ぶときは、両者のどちらを優先するかを書いておきます。基本契約には、秘密保持契約書を別に締結した場合は、秘密情報の定義、管理方法などの詳細について、秘密保持契約書の定めを優先する、と書いている例がありました。

作業時間の数え方:15分単位・待機・24時間対応なし

時間で報酬を決める仕事では、何を作業時間に数えるかが報酬そのものになります。オンライン秘書の基本契約は、次のように定めていました。

条文例作業時間と対応の範囲(例)

1作業時間には、業務遂行上合理的に必要な対応、確認、調査、資料作成、打合せ、修正対応その他付随する業務に要した時間を含む。

2常時待機の時間は、別段の合意がない限り、作業時間に含まれない。

3作業時間は15分単位で計算し、15分未満の端数は15分に切り上げる。

4乙は、24時間対応の義務、常時待機の義務又は即時返信の義務を負わない。土日祝日、夜間又は緊急の対応については、別に合意した場合を除き、対応する義務を負わない。

5事前に合意した範囲を超える業務、追加の対応、休日の対応が発生した場合、乙は追加報酬を請求できる。

第2項と第4項は対になっています。待機の時間は数えないが、待機する義務もない、と書いておきます。

「15分単位の切上げ」は、細かい作業が積み重なる秘書の仕事で、受注者の負担を報酬に反映させる方法です。ただし、依頼者から見ると、5分の確認が15分に数えられることになるため、切上げを置くときは、記録の方法も一緒に書いておくと、納得が得られやすくなります。委託者の側から見た報告書でも、稼働時間の定義、計測単位、端数処理、記録の方法が未定義であることが、超過分の精算が自己申告に頼る点として指摘されていました。

時間の数え方の選択肢

方式向いている仕事書いておくこと
15分単位の切上げ短い確認・返信が多い秘書の仕事端数の切上げ、記録の方法、月の上限時間と超過の事前報告。
1分単位、または30分単位資料作成など、まとまった作業が中心の仕事最低の請求単位(たとえば最低30分)、休憩・待機の扱い。
日額(1日いくら)常駐に近い形で事務を請ける仕事1日の稼働の目安、半日の扱い、交通費を含むか、請求書の提出期限。
月額の固定+上限時間継続して決まった範囲の事務を請ける仕事上限時間、超過のときの追加報酬、繰り越しの有無、休日・夜間の対応。

日額で請けるときは、時間・場所を固定しすぎて雇用と見られないかも点検します。

経理・一般事務・人事業務を日額で請ける方の契約書では、報酬が「実施した日数に応じて1日あたり定額(交通費を含む)」と書かれ、締日は月末、請求書は翌月の初旬までに提出し、支払は翌月の25日まで、請求書の提出を怠ったときは支払期日が繰り延べられる、という作りでした。日額に交通費を含めると、出社を求められる回数が増えるほど、受注者の手取りが減ります。また、請求書を出すことが支払期日の前提になっていると、請求の遅れが支払の遅れにつながるため、請求書を出す期限を確かめておきます。発注者がフリーランス法の特定業務委託事業者に当たる場合、報酬の支払期日は、請求書の有無ではなく、給付(役務の提供)を受けた日から60日以内で定められなければなりません(4条1項)。この点はフリーランス法・取適法で整理しています。税込か税別かが、日額の表示で変わる点にも注意が必要です。この契約書は、税込から税別への修正を経ています。

月額の前払い・入金確認後の着手・キャンセル料

準委任の報酬は、受任者は特約がなければ請求できず、請求できる場合でも、事務を履行した後でなければ請求できないのが原則です。期間によって報酬を定めたときは、その期間を経過した後に請求できます(民法648条1項・2項、624条2項)。つまり、月額を前払いにしたいなら、契約書に書く必要があります。

オンライン秘書の基本契約は、この点を版を重ねて具体的にしました。

月額報酬の請求と支払の書き方(版ごと)

版書き方整理した点
当初の案月額契約の報酬は原則として前払い。請求の締日は毎月25日、支払期限は請求書の発行日から10営業日以内。前払いを原則とする考え方を示している。
改訂後月額固定の報酬は、翌月分について毎月20日頃に請求書を発行し、当月末日までに支払う。入金を確認したあとに翌月分の業務を始める。時間の超過や追加対応の分は、対象月の末日で集計し、翌月20日頃に請求書を発行し、その月の末日までに支払う。単発の業務は個別契約で定める。固定分は前払い、変動分は後払いに分け、着手の条件を入金の確認にした。

実費(交通費、有料ツールの利用料、第三者サービスの利用料)は、依頼者があらかじめ承認したものを、依頼者が実費で負担する、と同じ条に書いています。

キャンセルは、次の3段階に分けて書かれていました。

  • 作業の開始前のキャンセルは、原則として無償とする。
  • 作業の開始後、または事前に予約された対応のキャンセルは、すでに稼働した作業時間、確保した作業時間、発生した費用を請求できる。事前に予約された打合せやオンライン会議などが、開始予定の時刻の24時間以内にキャンセルされたときは、予定していた対応時間に相当する額その他合理的な範囲のキャンセル料を請求できる。
  • 業務の開始後に、依頼者の都合で契約が解除され、または中途で終了し、返金を求められた場合でも、すでに実施した業務、対応した作業時間、確保した作業時間、発生した費用は返金しない。未実施の部分があるときの精算は、協議のうえ合理的に定める。ただし、法令上、返金の義務が生じる場合は別とする。

支払が遅れたときは、業務の停止などの措置をとれる、相当の期間内に支払がなければ催告なしに契約を解除できる、年14.6%の割合による遅延損害金を支払う、という定めも置かれていました。解約の予告は、依頼者・受注者とも14日前、依頼者が6か月以上続けて業務を委託しているときは、解除や更新しないことの通知は原則として30日前までとするよう努める、としています。フリーランス法16条は、特定業務委託事業者に、6か月以上続く継続的業務委託の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)を、少なくとも30日前までに予告することを義務付けています(継続的業務委託の定義は13条1項、その期間は同法施行令3条の6か月です。予告の義務そのものは16条1項)。契約書の予告の期間は、この法定の期間を下回らない形で書いておきます。契約の終わり方と精算は解約・解除と精算、病気やけがなどで受注者の側から続けられなくなったときは受注者が業務を続けられないときで扱っています。

仲介サイト(クラウドソーシング)経由の取引:サイトの規約と基本契約、どちらが優先か

秘書や事務代行の仕事は、クラウドソーシングのような仲介サイトを通して受けることも多い分野です。サイトを使うと、依頼者の募集、契約の成立、決済、連絡、納品がサイトの中で進みます。このとき、サイトの利用規約と、受注者が持っている基本契約のどちらが優先するかを決めておかないと、揉めたときの拠り所が定まりません。

オンライン秘書の基本契約は、まず用語を定義しました。「クラウドソーシングサイト」は、業務委託契約の募集、締結、決済、連絡、納品などを目的として運営されるオンラインのプラットフォームとし、「電磁的方法」には、サイト上のメッセージ機能を含めています。そのうえで、個別契約の内容(業務内容、報酬、対応時間、納期、支払期日)は、見積書、発注書、サイト上の発注内容、メール、チャットなどで定める、としました。契約書、見積書、発注書、サイト上の発注内容が食い違うときは、個別契約、本契約、その他の資料の順に優先する、という条です。

サイトの規約の位置づけ(版ごと)

版書き方整理した点
当初の案契約書、個別契約、サイトの規約などの内容が食い違うときは、個別契約、本契約、その他の資料の順に優先する。サイトの規約は、「その他の資料」の中に入っている。
改訂後同じ順位に加えて、サイトを使って取引するときは、決済の方法、手数料、キャンセル、禁止事項、紛争の処理、アカウントの利用など、サイトを使うことに当然に適用される事項は、サイトの規約が優先する。サイトの運営上の事項と、取引の中身(業務の範囲、報酬、責任)を分けた。

この分け方の考え方は、次のとおりです。手数料、決済の仕組み、アカウントの扱い、サイト内での紛争処理は、サイトの運営の枠組みで、受注者と依頼者の合意だけでは変えられないものです。一方、業務の範囲、報酬の算定、責任の限度、秘密保持などの取引の中身は、サイトの規約が定めていない部分を、基本契約や個別契約で補うことができます。受注者としては、サイトの規約が優先する事項をこのように限定して書いておけば、サイトの規約を理由に、基本契約で確保した保護(責任の上限、権利の留保、キャンセル料など)が全部上書きされることを防げます。

条文例サイトの規約との順位(例)

1本契約、個別契約、見積書、発注書、サイト上の発注内容その他の資料の内容が抵触するときは、法令上強行的に適用される場合を除き、個別契約、本契約、その他の資料の順に優先して適用する。

2ただし、サイトを利用して取引を行うときは、決済の方法、手数料、キャンセル、禁止事項、紛争の処理、アカウントの利用その他当該サイトの利用に当然に適用される事項については、当該サイトの利用規約その他の関連規約が優先して適用される。

3電磁的方法による取引条件の明示は、書面の交付に代わる方法として用いることができる。

第3項は、フリーランス法3条1項が、給付の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法で明示することを求めていることを受けた一文です。電磁的方法で明示した場合でも、受注者から書面の交付を求められたときは、発注者は、例外に当たる場合を除いて、遅滞なく書面を交付する必要があります(同条2項)。

サイトを使うときに、もう一つ気をつけたいのは、サイトの外で取引を続けることです。サイトの規約が、サイトを介さない直接の取引を禁止していることがあります。サイトを離れて直接取引を始めるときの契約書の切り出し方は、依頼者の態度・値下げ・修正への備えで扱います。契約書を交わす前の確認は締結前の確認にまとめています。

単価・実費・成果報酬:「1件いくら」の仕事の決め方

EC運営の商品登録や顧客対応のように、1件ごとの単価で報酬を決める仕事では、単価が契約書に明記されているか、一方的に変更できないかが最初の確認事項です。EC運営のアシスタントの契約を確認した事務所は、契約の時点で商品登録、カスタマー対応、海外代行の単価が決まっていて、会社が通知して単価を変更できるといった条項がないことを、受注者にとって安心できる点として回答しました。契約後に「来月から単価を半分にします」と決められる内容にはなっていない、という確認です。

一方で、同じ確認では、契約が途中で終わったときの精算が書かれていない点が残りました。商品登録のように件数で数えられる業務は、登録が終わった件数で計算できても、顧客対応や進行中の案件は解釈の余地が残ります。そのため、「契約終了日までに実施した業務は通常どおり精算する」という一文があるほうが望ましい、と整理しました。

月額と成果報酬が併存する場合は、成果の認定が揉めやすくなります。アシスタント・Webデザインの業務を月額で請ける個人の契約書では、当初の案が、月額報酬または成果報酬を、金額も含めて「協議のうえ別途確定する」としていました。改訂後は、次の形に整理されています。

受け取った条文の直し方 報酬の確定と成果報酬

報酬の種類と金額

受け取った条文報酬の種類と金額は、協議のうえ別途確定し、確定後の条件に従って支払う。(当初の案)
修正の提案月額の固定報酬を契約書に明記し、内容に変更が生じるときは、協議のうえ書面または電子メールで合意する。

理由報酬が未確定のままだと、着手した後に条件を決める立場になり、受注者に不利です。契約書の時点で、確定した数字を入れておきます。

成果報酬

受け取った条文成果報酬の対象となる業務は、協議のうえ成果の認定基準を別途確定する。商談化の認定には事前の合意が必要。(当初の案)
修正の提案成果報酬型の業務は想定せず、成果報酬は発生しないものとする。将来、成果報酬型の業務を追加するときは、協議のうえ書面または電子メールで合意する。

理由成果報酬を併存させるなら、認定の基準と時期、支払の時期をあらかじめ書きます。想定しないなら、発生しないと書いておきます。

業務の内容

受け取った条文営業戦略の立案、営業支援、採用業務などを含む業務全般を委託する。(当初の案)
修正の提案受注者が実際に行うアシスタント業務、Webデザイン業務などに書き直し、具体的な内容は協議のうえ書面または電子メールで確定する。

理由実態とずれた業務名が書かれていると、範囲を広げる根拠にされます。実際に行う業務に合わせます。

税込・税別の表示

受け取った条文報酬は税込の額とする。(当初の案)
修正の提案報酬は税別の額とする。

理由税込か税別かは、必ず明記します。

実費(交通費、有料ツール、第三者サービスの利用料、郵送料など)は、「依頼者があらかじめ承認したものを、依頼者が実費で負担する」と書くのが基本です。承認なしに立て替えると、あとで請求できません。日額や月額の報酬に交通費を含める場合は、含める範囲と、出社や出張の回数の目安も書いておきます。

受注者に起きがちなこと

よくあるご質問

オンライン秘書の契約書で、最初に書いておくことは何ですか?

受けない業務です。法律・税務・労務などの判断や助言、契約締結の代理、口座や決済の操作、資格や許認可が要る業務を「行わない業務」として並べます。そのうえで、受ける業務、作業時間の数え方、対応する曜日・時間帯、預かるアカウントの責任の分け方を書きます。

依頼者のIDとパスワードを預かるとき、責任はどうなりますか?

契約書で分けておく必要があります。依頼者が自己の責任で共有し、受注者は善良な管理者の注意をもって管理する、ただし受注者の故意または重大な過失がなければ、不正アクセスや漏えいなど第三者による利用について責任を負わない、という書き方があります。私物の端末を使うときの安全措置と、終了時の削除や報告も一緒に定めます。

作業時間を15分単位で切り上げるのは、問題ありませんか?

契約で合意すれば可能です。短い確認や返信が多い仕事で、受注者の負担を報酬に反映する方法です。切上げを置くときは、作業時間に含まれるもの、待機の時間を含まないこと、記録の方法をあわせて書いておくと、依頼者の納得が得られやすくなります。

クラウドソーシングで受けた仕事で、自分の契約書とサイトの規約が食い違ったら、どちらが優先しますか?

契約書に書いてあるとおりに決めます。決済の方法、手数料、キャンセル、禁止事項、紛争の処理、アカウントの利用など、サイトの利用に当然に適用される事項は、サイトの規約を優先し、それ以外の取引の中身は、個別契約と基本契約を優先する、と分けて書く方法があります。何も書かないと、揉めたときの拠り所がありません。

1件いくらの単価で請けるとき、確認することは何ですか?

単価が契約書に明記されているか、会社が通知だけで単価を変更できないか、途中で契約が終わったときに実施した分を精算すると書いてあるか、実費の負担と承認の手続はどうなっているか、の4点です。月額と成果報酬が併存するときは、成果の認定の基準と支払の時期も決めます。

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