ライター・編集者・記事制作の業務委託契約書:単位・直し・実費・公開後の責任

記事の契約では、報酬の目減りは、記事の出来より、文字数の数え方、直しの終わり、取材の実費、公開後の責任の4点から起きます。

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「見出しと引用は文字数に含めない」「取材の宿泊は自己負担」「表示の責任は全て発注者が負う(が、指摘があれば受注者が直す)」。書かれていない1行が、書いた分より大きな負担になります。

このページの要点

  • 文字単価は、何を文字として数えるか(見出し・引用・キャプション・メタ情報)と許容の幅を決める。報酬に含む作業を列挙し、掲載されなかった原稿の報酬も書く。
  • 取材費・資料費は、対象の費用、事前の承諾と上限、精算の時期、日程変更の原因別のキャンセル料の負担を書く。準委任には費用の前払・償還の定めがある(民法649条・650条1項)。
  • 記事制作は請負に近く、投稿・レポートは準委任に近い。投稿をもって納品とするなら、検収期限とみなし承認を置き、リライトの無償の回数と直しの区分を決める。
  • 医薬品医療機器等法66条1項や医療法6条の5第1項は「何人も」。表示の責任を発注者に置く契約でも法令の義務は消えない。広告の判断・根拠資料・表現集は発注者、書き手は明白な違反を避けることと疑義の指摘まで、と分担する。

最初に押さえること:記事の契約は「単位」「直し」「実費」「公開後の責任」の4点で読む

ライター・編集者・記事制作を請け負う受注者の契約書では、記事の出来そのものより、周辺の条件で報酬が目減りしがちです。記事の本数や文字数の数え方、直しの終わりの決め方、取材の交通費や資料代、公開した記事に問題が見つかったときの責任。この4点が書かれていないか、受注者だけに重く書かれていると、書いた分より大きな負担が残ります。

事務所が受注者の側で扱った文章・コンテンツ制作の契約書は、ランディングページの構成と文案を請け負う個人の契約書、動画教材の構成・スライド・台本・動画編集を請け負う制作会社の契約書、医療法人のウェブサイト向けのSEO記事の制作と投稿の代行を請け負う事業者の契約書の3種類です。このページは、ライターや編集者が受け取る契約書に共通する点を、これらで確認した内容と、民法・著作権法・フリーランス法の条文で整理します。「事務所が扱った」「事務所のレビューでは」と書いた部分以外は、条文に基づく一般的な説明です。SEO記事の制作と投稿を請け負う契約の点検項目は広告運用代行・集客支援の契約書ガイドのSEO・MEOのページで、医療広告の基準は医療・介護・ヘルスケアの契約書ガイドの医療広告のページで扱っているため、このページでは、書き手の側の契約に絞ります。

報酬の決め方は、記事の仕事では次の型に分かれます。どの型でも、報酬の額が税込か税別かを契約書にはっきり書いてもらいます。

記事の報酬の決め方の型

決め方起きること書いておくこと
文字単価文字数の数え方(見出し・引用・図表のキャプションを含むか)で額が変わる。構成案や取材が単価に含まれていることがある。数える範囲と許容の幅、構成案・取材・校了までの範囲を別に書く。
記事単価(1本いくら)文字数や取材の回数が増えても、額が変わらない。文字数の上限、取材の回数、図表の有無など、単価の前提を書く。
月額・時間上限のない依頼で、実際の稼働が月額を超える。編集や進行管理の時間が見えにくい。月の本数・時間の目安と、超えたときの扱いを書く。
成果報酬(閲覧数・順位など)記事の出来以外の要因(検索結果の変動、広告の運用)で額が決まる。算定に使う数字の出所、最低保証、受注者が左右できない要因の除外を書く。

編集者やディレクターとして入る仕事は、記事を書く仕事と契約の組み立てが違います。企画、他のライターへの発注、校閲、入稿といった進行管理は、稼働の時間と担当の範囲で決まる性質が強く、成果物の完成を約束する形になじみません。他のライターの原稿の品質をどこまで負うのか、修正の最終判断は誰がするのかを、担当の範囲として書いておきます。校閲や事実確認の範囲も同じです。発注者が渡した資料の正確さは発注者が、取材先の発言の正確さは取材先への確認の手順で、それぞれ担保する、と書いておくと、書き手が全部の事実の正しさを引き受ける形になりません。

契約書全体の読み方は読む順番、範囲を広げる言葉と修正回数の一般的な直し方は業務範囲・追加作業・修正回数のページで扱っています。

記事の「単位」を決める:文字数・本数・工程・掲載されなかった原稿

文字単価の契約で最初に決めるのは、何を一文字として数えるかです。本文だけか、見出し、リード文、箇条書き、引用、図表のキャプション、タイトルや検索結果に表示される説明文(メタ情報)まで含めるか。数える方法も決めておきます。指定の文字数に対する許容の幅(たとえば前後1割)を超えたときの扱いも必要です。超過分を無償で受けるのか、追加の報酬の対象にするのかで、同じ記事でも報酬が変わります。本数も同じで、「月5本」のような書き方は、月のうちに何本納めるのか、月の途中で本数が減るときは報酬をどうするのか、まで書いて初めて数えられる形になります。

受け取った条文の直し方 記事の単位を決める条文の直し方

文字数の数え方

受け取った条文受け取った条文の例:記事の文字数は、納品された原稿の文字数による。
修正の提案文字数は、本文(見出し・リード文・箇条書きを含み、引用・図表のキャプション・メタ情報を含まない)を、○○の方法で数えた数とする。指定の文字数の前後1割を許容の幅とし、これを超える部分は、事前に連絡して甲の承諾を得る。

理由数え方が決まっていないと、報酬の基準になる数字そのものが争いになります。

報酬に含む作業

受け取った条文受け取った条文の例:報酬には、構成案の作成、取材、校正その他記事の完成に必要な一切の作業を含む。
修正の提案報酬に含む作業を、構成案(見出し案)の作成、本文の執筆、取材○回、初稿から校了までの修正○回、と列挙する。含まない作業(追加の取材、図表の作成、画像の調達)は、別の依頼として見積りを出す。

理由「一切の作業」は、含む作業の範囲を発注者の側で広げられる書き方です。

掲載されなかった原稿

受け取った条文受け取った条文の例:掲載されなかった原稿の報酬は支払わない。
修正の提案納品して検収を受けた原稿は、掲載の有無にかかわらず報酬の対象とする。取材の後で企画が中止になったときは、実施済みの作業の分を精算する。

理由掲載の可否は発注者の判断で決まります。受注者が書いた作業の対価を、その判断に左右させないためです。

記事ごとの工程も、報酬に含まれる範囲を決めます。構成案(見出し案)の作成を報酬に含めるか。構成案を承認した後に方針が変わったときは、再執筆を追加の依頼として扱うか。取材の有無と回数、取材先への原稿確認(いわゆる「戻し」)の手間と、それによる納期の延び。図表や画像は誰が用意するのか。最後に、校了(これ以上は直さず、公開してよいとする段階)を定義し、校了後の訂正をどう扱うかを書きます。

報酬を受け取る時期も、単位の設計の一部です。事務所が受注者の側で扱った動画教材の制作会社の契約書は、セクションという単位ごとに報酬を決め、作業を始める前に支払を受ける形でした。支払が確認されてから着手し、支払期日までに支払がないときは、受注者が着手を拒否できます。記事も、1本ごとに報酬が確定し、着手の前に受け取る設計にすると、没になった原稿の報酬が、書いた分から目減りしにくくなります。

調査や下書きに生成AIを使ってよいか、使うときに発注者へ知らせるかも、記事の仕様として決めておきます。使い方によって、発注者が求める品質や、第三者の権利への配慮が変わるためです(権利を侵害しない保証)。

取材費・資料費・宿泊のキャンセル料:だれが、いつ、いくらまで負うか

取材の交通費、宿泊費、資料の購入費、取材先への謝礼、有料のデータベースの利用料、文字起こしや翻訳の外注費。記事を書く仕事には、報酬とは別に費用がかかります。契約書に書かれていないと、受注者が自分で負担することになりがちです。

民法の初期設定は、契約の性質で異なります。準委任(法律行為でない事務の委託)では、委任事務を処理するのに費用を要するときは、委任者は受任者の請求により前払をしなければならず(民法649条)、受任者が必要と認められる費用を支出したときは、償還を請求できます(650条1項)。請負には、これと同じ形の費用の前払・償還の規定がありません。特約がなければ、報酬の中でまかなうものと受け取られやすい、という違いがあります。記事の執筆は請負に近く、編集や進行管理は準委任に近い仕事なので、書面で費用の扱いを決めておくのが確実です。

  1. 対象の費用を列挙する。交通費、宿泊費、資料の購入費、取材謝礼、有料データの利用料などを挙げ、「報酬に含まれる費用」と「別に実費で精算する費用」を分けます。「報酬には、本業務に要する一切の費用を含む」という書き方は、実費をすべて受注者が負担する形になります。
  2. 事前の承諾と上限を置く。一定の額を超える費用や、遠方への出張、宿泊を伴う取材は、事前に発注者が承諾する。承諾のない費用は精算の対象外としつつ、承諾を得るための連絡の手段(メールなど)を決めます。
  3. 精算の方法と時期を決める。領収書の提出と、精算の時期(報酬の支払と同じ月に払う)。金額が大きい取材は、費用の前払を請求する方法もあります(準委任なら民法649条)。実費の金額も、税込か税別かをはっきり書きます。
  4. 日程の変更とキャンセルの料金を、原因ごとに分ける。取材先の都合、発注者の都合、受注者の都合のどれで日程が変わったのかによって、宿泊や交通のキャンセル料を負担する人を分けます。日程が動いた経緯をメールなどで残しておけば、受注者が自己負担にならずに済む場面があります。
  5. 購入した資料と取材の素材の扱いを決める。購入した書籍や資料の帰属、取材メモ・録音データ・写真の保管期間と、契約終了後の返却・削除です(返還と消去)。

条文例取材費等の負担の定め(例)

1乙の報酬には、記事の執筆・編集に係る作業の対価のみを含み、別表に掲げる費用(取材に係る交通費、宿泊費、資料の購入費、取材謝礼、有料データの利用料)は含まない。

2前項の別表の費用は、乙があらかじめ甲に連絡して甲が承諾したものに限り、甲が実費で負担する。1件の費用が○円(税込)を超えるものについては、書面又は電子メールによる承諾を要する。

3乙は、前項の費用を精算する書面(領収書等)を甲に提出し、甲は、提出の日の属する月の翌月末日までに支払う。

4取材の日程が、甲又は取材先の都合で変更されたことにより生じた宿泊・交通のキャンセル料は、甲が負担する。乙の都合による変更の場合は、乙が負担する。

「別表の費用は含まない」と「承諾した費用だけを実費で払う」をセットにすると、受注者の持ち出しも、発注者が予想しない請求も防げます。

取材の録音や個人情報の取扱いについても、契約終了時に返却・削除する旨を定めます。記録に個人が特定される情報が含まれるときは、取材先との関係も踏まえて、保管の期間を決めます。

請負的な記事制作と、準委任的な投稿・レポート:納品・検収・リライト

ライターや記事制作の仕事は、性質の違う作業が混ざります。記事を書いて納めるのは、成果物の完成を約束する請負に近く、結果に対して報酬が払われます(民法632条)。サイトへの投稿、アクセス状況の報告、改善の提案は、事務の遂行を約束する準委任に近い仕事です(643条・656条)。請負なら成果物の不具合に対する責任が問われ、準委任なら善良な管理者の注意を尽くしたかが問われる、という違いがあります。契約書では、サービスごとに、どちらの類型なのか、それぞれの責任の範囲、やり直しの義務の有無を書いておきます。

この違いは、フリーランス法にも現れます。文字などで構成される記事(2条4項3号)の作成を委託するのは情報成果物の作成の委託(2条3項1号)、投稿の代行やレポートの提出は役務の提供の委託(同項2号)にあたります。1か月以上の取引(施行令1条)で発注者が特定業務委託事業者であれば、禁止行為の規律がかかりますが、役務の提供の委託では、受領の拒否(5条1項1号)と返品(同項3号)の禁止は適用されません(5条1項柱書の括弧書)。記事の執筆と投稿の代行を一つの契約にまとめるときは、どの作業が、どちらの類型なのかが、書面から読み取れるようにしておきます(フリーランス法)。

投稿をもって納品とするとき。記事をサイトに投稿するまでを請け負うと、「納品」がいつなのか、発注者の「承認」がいつなのかが不明になりがちです。検収の期限(たとえば納品の日から5営業日以内)を設け、期限内に異議がなければ承認とみなし、「投稿の完了と、発注者の承認(又は承認とみなされること)をもって履行の完了とする」と書く方法があります(検収・契約不適合)。

リライトと直しの区別。書き直しは、回数と期限と、有償か無償かが書かれていないと、受注者に際限のない対応義務を負わせます。事務所が扱った、ランディングページの構成と文案を請け負う個人の契約書では、初稿の提出後は5回まで、納品後は3回までを無償とし、納品後に定めた回数を超えるときは、受注者が費用の見積りを示し、発注者が事前に承諾したうえで有償で対応する、という形にしていました。直しの依頼を、内容によって区別すると、扱いが決めやすくなります。

直しの依頼の区分

依頼の内容扱い理由
誤字・脱字、事実の誤り(受注者の側の誤り)無償で直し、回数に数えない。受注者の責めに帰すべき不具合だからです。
言い回し・語順・表現の調整回数に数える。上限の回数までは無償。好みの調整は回数で区切らないと終わりません。
方針・読者・構成の変更追加の依頼として見積りを出す。最初の依頼の範囲を超えるためです。
発注者があとから提供した資料に基づく追記・差し替え追加の依頼として扱い、納期も見直す。提供の遅れや内容の変更が原因だからです。
公開後の法令やルールの変更に伴うリライト別の依頼として別料金。最初の契約の対象ではないためです。

1か月以上続く取引で発注者が特定業務委託事業者であれば、受注者の責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、又は給付を受領した後にやり直させることは、禁止されています(フリーランス法5条2項2号)。回数の上限そのものは、契約書で決めておきます。

連絡が止まったとき。原稿が止まるのは、受注者の側だけが原因とは限りません。ランディングページの契約書は、発注者が7日以上連絡をせず、受注者の催告にも応じないときは、受注者は作業を一時中断でき、その間は納期が自動的に延びる、と定めていました。その状態が14日を超えて続くときは、受注者が契約を解除できるとして、解除に伴う損害は発注者が賠償すると書いています。取材先の返事や発注者の素材が届かないときの扱いは発注者から資料や回答が届かないときのページ、解除のあとの精算は解約・解除と精算のページが参考になります。

公開される記事の表示の責任:書き手が発注者に確認しておくこと

健康、美容、医療といった分野の記事は、記事の内容がそのまま広告の表示になることがあります。契約書に「記事の表示の責任は、すべて発注者が負う」と書いてあれば、書き手は安心できるでしょうか。契約書の定めは、発注者と受注者の間の分担にはなりますが、法令の義務を消すことはできません。まず、条文が誰に向けて書かれているかを確かめます。

記事に関わる広告規制の名宛人

法令条文の書き方記事を書く人に関係すること
医薬品医療機器等法(誇大広告)66条1項:何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。「記述し」とあるため、記事を書く行為も含まれ得ます。違反した者は、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処せられ、又はこれが併科されます(85条4号)。
景品表示法(不当表示)5条:事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、優良誤認や有利誤認になる表示などをしてはならない。名宛人は、自己の商品・役務について表示をする事業者です。記事の対象の商品やサービスを供給しているのは、通常は発注者です。
景品表示法5条3号の指定(ステルスマーケティング)令和5年内閣府告示第19号:事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示で、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であるもの。広告であることを示す表記を入れるかは、事業者である発注者の判断です。書き手は、その表記の指示を確認します。

医薬品医療機器等法66条1項の対象は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品です。健康食品などの表示は別の規律にかかるため、記事の対象が何かを先に確かめます。医療法6条の5第1項の虚偽広告の禁止も、同じく「何人も」を名宛人にしています。

「何人も」と書かれた規制では、契約書で責任を発注者に置いても、記事を書いたこと自体が問題になる可能性は、契約では消えません。ただし、条文に書かれているからといって、記事を書いた人が当然に処罰されるという意味ではありません。違反の成否は、記事の内容、書き手が知っていたか、誰が内容を決めたかといった事情によって異なります。事務所のレビューでも、医療法人向けのSEO記事の契約で受注者を全面免責とする条項について、受注者にも明白な違反を避ける注意義務を残し、最終の確認は発注者に置く書き方を示しました(医療広告の基準と契約の書き方の詳細は、医療・介護・ヘルスケアの契約書ガイドの医療広告のページで扱っています)。このページでは、記事を書く側が、書き始める前に何を発注者に確認し、何を書面に残すかに絞ります。

書き始める前に、発注者に確認すること

  • 記事が広告に当たるか(商品やサービスの販売・集客を目的にしているか)と、載せる媒体はどこか。
  • 使ってよい表現と使えない表現の一覧(表現集)があるか。効能・効果・安全性を述べる文言は、発注者が書面で示した資料の範囲に限る。
  • 数字、実験結果、体験談、口コミの出所と、記事に使ってよいという同意があるか。出所の確認は発注者が行う。
  • 広告であることを示す表記(PR表記など)を入れるか。入れない指示のときは、理由を確認し、指示を書面で残す。
  • 監修者や専門家の確認が入るか。入るなら、確認を受けた版を最終版とし、以後の変更は発注者の指示による。
  • 疑義があって指摘したときの連絡先と、回答の期限はどうなっているか。

指摘と、それに対する発注者の指示(採用するか、変えるか)は、メールなどの書面に残しておきます。

条文例記事の表示に関する責任分担の定め(例)

1甲は、本件記事が広告に該当するかの判断、掲載する媒体の決定及び公開の最終判断を行う。

2甲は、本件記事に記載する効能、効果、安全性その他の表示の根拠となる資料及び使用してよい表現を、書面又は電子メールで乙に提供する。乙は、当該資料及び表現の範囲で記事を作成する。

3乙は、本件記事が法令に明白に違反しないよう、一般的かつ合理的な範囲で注意するものとし、疑義があるときは甲に指摘する。本件記事の法令適合性の最終的な確認は、甲が行う。

4乙が前項の指摘をしたにもかかわらず、甲が当該表現の採用を指示したことにより生じた損害及び費用は、甲が負担する。

契約書の定めは、発注者と受注者の間の分担です。行政機関や第三者に対する法律上の義務は、契約書では消えない前提で書きます。公開後の法改正による見直しは、追加の依頼として別料金にします。

発注者から渡された資料の正確さと、第三者の権利の侵害は権利を侵害しない保証、受注者の損害賠償の範囲は賠償の上限のページで扱っています。

署名記事・実績掲載・再利用:権利を渡すときに残すもの

記事の契約では、署名を入れるか入れないかも、契約で決める点です。著作者は、著作物の公衆への提供に際して、実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を持ちます(著作権法19条1項)。実名の署名、ペンネーム、無記名のいずれにするかは、著作者である書き手が決める権利です。いわゆる代筆として無記名にするときは、氏名を表示しないことを契約書に書きます。無記名の仕事は、後から実績として示しにくくなるので、実績の扱いと一緒に決めます。

署名を入れるなら、表記の方法(氏名の表記、プロフィール、リンク先)と、表示を外す条件を書きます。著作者人格権は一身に専属し、譲渡できません(59条)。そのため、発注者は、権利を譲り受けるのではなく、人格権を「行使しない」という約束を求めます。

記事の著作権を発注者に移すときは、翻案権など(27条・28条)を譲渡の対象として特掲しないと、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(61条2項)。発注者の側から見れば特掲が必要になるため、受注者は、移転の範囲が「本件記事」に限られているか、移転の時期が代金の全額を受け取った後になっているかを確かめます。事務所が扱った契約書では、権利の移転を「納品が完了し、かつ代金の全額が支払われた時」としたものと、制作費の完済を移転の時期とするものがありました(詳しくは知的財産のページ)。

実績として載せる。記事の著作権が発注者に移ると、受注者が記事を自分のサイトやポートフォリオに載せる行為は、複製(21条)や公衆送信(23条)にあたり、権利を持つ発注者の許諾が必要になります(63条)。ランディングページの契約書は、匿名化し、又は概要のみを用いる形であれば、ポートフォリオ、SNS、営業資料に制作実績として載せられると、あらかじめ発注者の同意を得ていました。記事の仕事では、このほかに、署名記事へのリンク、掲載媒体での著者のプロフィール、読者の反応や成果の数字を載せる範囲も、あらかじめ決めておきます。

この契約書には、もう一つの工夫がありました。低めのモニター価格で受ける代わりに、発注者が納品後の感想、成果の報告、簡易なインタビュー(書面・音声・映像を含む)に協力する義務を負う、という特約です。価格を下げる代わりに実績を得る取引では、使える範囲(媒体、氏名や顔写真の扱い)と、取り下げる条件を、特約の中に書いておきます。

汎用の部分を手元に残す。動画教材の構成・スライド・台本・動画編集を請け負う制作会社の契約書は、成果物の著作権を受託者に留保し、発注者には無償・非独占・期間と地域を限らない利用許諾を与える設計でした。そのうえで、個別に特定した例題のコンテンツだけは、発注者に独占的に帰属させています。記事の仕事に置き換えると、取材の過程で得た素材、自作の調査データ、構成のひな型、用語集は受注者に残し、記事そのものは移転するか独占的に許諾する、という分け方ができます。さらに、自分のサイトへの転載、書籍化、他の媒体への再利用を認めるかを、独占か非独占かとあわせて決めます。

引用と素材。他の文章を引用して使うときは、公表された著作物を、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行う必要があります(32条1項)。画像や図表は、引用では足りないことが多く、素材の調達と権利の処理を誰が行うかを決めておきます。発注者が渡した素材の権利関係は発注者が確認する、と書くのが受注者の側の基本です。

投稿まで任されたとき:サイトの権限の渡し方と、終了時の解除

記事の投稿まで請け負うと、発注者のサイトの管理画面や、アクセス解析、検索の管理のためのツールに、権限が必要になります。権限が曖昧だと、サイトに不具合が起きたときに、受注者の操作が疑われます。権限のレベルと、契約の終了時に権限を外す義務を、契約書に書いておきます(検索対策の契約での権限の置き方は、広告運用代行・集客支援の契約書ガイドのSEO・MEOのページでも扱っています)。

権限の渡し方を契約で決める

  • 権限のレベルを書く(閲覧のみ・編集まで・管理者)。作業に必要な最小限にとどめ、管理者の権限を求められたら理由と範囲を確かめる。
  • 共有のIDとパスワードではなく、受注者個人のアカウントへの招待や権限の付与の形にする(誰が操作したかの記録が残る)。
  • 記事の公開は、発注者の承認の後に行う。承認の記録(メールなど)を残す。
  • 契約の終了日から○営業日以内に権限を解除する期限と、解除の確認の方法を定める。
  • 受注者の側に保管している認証情報や、ダウンロードしたデータを削除する。
  • サイトの障害、表示の崩れ、外部のサービスの仕様変更、セキュリティの事故による損害は、受注者の責任の外にする。

ランディングページの契約書は、納品後の運用で起きる、システムの障害、外部のサービスの仕様変更、表示の崩れなどによる損害について、受注者は責任を負わないとしていました。受注者の故意又は重大な過失による場合は別、という例外を付けています。

アクセス解析の数字を実績として載せたいときは、発注者の同意を契約書に書いておきます。解析のデータには、他の情報と容易に照合でき、それにより特定の個人を識別できるものが含まれる場合があり、その場合は個人情報にあたります(個人情報保護法2条1項1号)。公開は統計の情報に限り、発注者や読者が識別されない形にするのが基本です。公開できる範囲を決めておけば、そのつど発注者に確認する手間も減ります。

受注者に起きがちなこと

よくあるご質問

文字単価の契約では、何を文字数に含めるか決めておくべきですか?

決めておくべきです。本文だけか、見出し、リード文、引用、図表のキャプション、タイトルやメタ情報まで含めるかで、同じ記事でも報酬が変わります。数える方法と、指定の文字数に対する許容の幅、超過分を無償で受けるのか追加の報酬にするのかもあわせて書きます。報酬の額は、税込か税別かを必ず明記します。

取材の交通費や資料代は、契約書に書いていなければ請求できませんか?

準委任の性質の仕事では、費用を要するときの前払の請求(民法649条)や、必要と認められる費用の償還の請求(650条1項)の定めがあります。請負にはこれと同じ形の規定がなく、特約がなければ報酬の中でまかなうものと受け取られやすくなります。記事の執筆は請負に近く、編集は準委任に近いので、対象の費用、事前の承諾、上限、精算の時期を契約書に書いておくのが確実です。

記事の表示の責任は発注者が負う、と契約書に書いてあれば、書き手は責任を負いませんか?

契約書の定めは、発注者と受注者の間の分担としては意味がありますが、法令の義務を消すことはできません。たとえば医薬品医療機器等法66条1項は、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布することを「何人も」してはならないと定めています。書き手の側では、広告かどうかの判断、根拠資料と使ってよい表現の提供、公開の最終判断を発注者に置き、書き手の義務を明白な違反を避けることと疑義の指摘までにとどめる、という分担にしておきます。

記事の著作権を発注者に譲渡すると、自分のブログに載せられなくなりますか?

著作権が発注者に移ると、受注者が記事を自分のサイトに載せる行為には、発注者の許諾が必要になります(著作権法21条・23条・63条)。そのため、匿名化した形や概要のみの形での実績の掲載、署名記事へのリンク、自分の媒体への転載を、移転の条項とあわせて契約書で認めてもらいます。移転ではなく、独占的な許諾にとどめる設計もあります。

投稿代行や解析ツールの権限は、契約が終わったらどうすべきですか?

権限のレベルを契約書で決め、終了日から○営業日以内に権限を解除する期限と確認の方法を定めておきます。受注者の側に保管している認証情報や、ダウンロードしたデータも削除します。解除の連絡と確認をメールなどに残しておくと、終了後にサイトの不具合が起きても、受注者の操作ではないことを示す材料になります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への法律の適用は、当事者の属性や取引の内容によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が受注者(業務を請ける側)の立場で作成・レビューしてきた業務委託契約書、基本契約・個別契約、秘密保持契約書、誓約書、先方へ送る修正のお願いの文案などを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 法人番号公表サイト(国税庁)

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